VP-X93は、デュアルプラットフォームのSPD入門ペダルです。カップ&コーンの非常にシンプルな構造のペダルです。玉押し調整をした後に左ペダルにいろいろなグリスを入れてグリスとの相性を見てみました。
右の写真は、ペダル本体を抜き取ったシャフトの写真です。シャフトはアルマイト処理されていると思うのですが、ベアリングが、アルマイトを削り取っている様に見えます(塗料だけかもしれませんが)。出荷状態で、玉押しが、きつくベアリングを押していたことが原因と推測しています。
玉押し調整後は、ゴリ感もなくスムースに無負荷回転していました。しかし、20-30分踏んでいると左から【きしみ音】が出てきたので、左だけグリスを打ち換えて音が消えるかどうかをテストしてみました。
注意 デュラグリスは、シマノプレミアムグリスが正しい名称です。Specは、Autol Top2000を引用しました。
オリジナル | WAKOS シリコングリス | TRUSCO リチウムグリス | デュラグリス | 手持ちグリス | |
基油 | 不明 | 合成油 (シリコン) | 鉱物 | 部分合成油 | 鉱物? |
増ちょう剤 | 不明 | 非石けん系 (PTFE) | リチウム | 無水 カルシウム | カルシウム? |
添加剤 | 不明 | なし | なし | なし | モリブデン? |
色 | 半透明 | 白 | 半透明 | 黄緑色半透明 | 黒黄色半透明 |
上の表が、今回試したグリスです。VP-X93に最初から使われていたオリジナルと手持ちのグリスの素性はよく分かりませんが、オリジナルは、リチウム石けん系鉱物油かと思います。手持ちのグリスは、カルシウム石けん系鉱物油のモリブデン添加ではないかと思います(あくまでも想像ですが)。
ペダルにベアリングとデュラグリスがセットされている写真を掲載しましたが、こんな感じで全てグリスは入れています。
手持ちのグリスは、たぶん30年以上前に入手したビンテージ物で、詳細は全く分かりませんが、色がかなり濃く黒に近いので、モリブデンかグラファイトの極圧剤が添加されていると想像しています(結果を加味して)。
粘丁度順位
【軟らかい】WAKOS≒TRUSCO<オリジナル<デュラ<手持ち【硬い】
無負荷回転では、軟らかいグリスが有利ですが、今回のラインナップであれば、硬いグリスでも特別に気になるほどの差ではないと言えます。玉押しの調整の方が重要です。
どのグリスでも静止位置に戻ってきて、硬くても途中で止まることはありません。軟らかいと静止位置付近で揺り返しが出て静止に少し時間がかかります。
結果
異音が消えたのは、「手持ちグリス」のみ
オリジナル | Wakos シリコングリス | Trusco リチウムグリス | デュラグリス | 手持ちグリス | |
異音の有無 | 有 | 有 | 有 | 有 | 無 |
発生 タイミング | 20~30分 以降 | 20~30分 以降 | 20~30分 以降 | 30-40分 以降 | – |
異音の出方 | 止まる事 あり | 出続ける | 出続ける | 出続ける | – |
デュラグリスも最初は調子よかったのですが、40分を過ぎたところできしみ音が出始めてその後はずっと出ていました。デュラグリスで音が止まると思って最後にテストしましたが、ダメだったので急遽手持ちグリスを追加してやりました。
結果から考えると、ペダルシャフトにかかる圧力(トルク)変動に対してグリスが切れているという事のようです。そこで極圧剤があれば、油膜が切れても固体潤滑剤がそれをフォローしてくれていると考えるのがいいのかなと想像しています。
右ペダルは、オリジナルグリスでほとんど異音は出ないので(皆無ではない)、玉押し調整と微妙な関係があるか、オリジナルグリスにも何か添加剤が入っているのかもしれません。
ちなみにテスト方法は、WahooKICKERを使った80分乳酸閾値レベルのトレーニング中の異音有り無しです。ケイデンスは、最初のアップの途中に100rpm1分が3回あるだけで、後は、脚出力指定に従って70~90rpmで回しています。
考察
カップ&コーン構造のペダルの異音は、極圧剤添加のグリスを試す!
そんなに高いグリスでなくていいので、工具箱にモリブデン添加のグリスがあるといいと思います。増ちょう剤はカルシウム石けん系、基油は鉱物油系が材料的には安いはずです。
軽く回したいハブグリスは、少し高価ですが、増ちょう剤はウレア系、基油は合成油系、極圧剤は無くてもいいと思いますがセラミック系とかいいかもしれません。
迷ったらデュラグリスでいいと思います。
注意 フリーハブのラチェットには硬すぎるので対象外です。
掘り出し物があるかも?!
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